ふろに入らないほうが美肌になる!

ふろに入るほど

皮膚は乾燥する

日本人ほど、ふろ好きな民族はいません。多くの人が、それほど汗をかいていなくても、体が汚れていなくても、毎日入浴しています。子どものころに、「顔と体は石けんできちんと洗いなさい。そしておふろに肩までつかって、よく温まってから上がりなさい」と祖父母や両親からしつけられた経験もあるでしょう。

 

ですから、ふろが皮膚の健康を大いに損ない、アトピー性皮膚炎や乾燥肌を悪化させるとは、思いつきにくいものです。国立病院機構 九州医療センター皮膚科(当時)の今山修平医師は「問題は習慣にある」と語ります。つまり、症状が長く消えないのは、日ごろなにげなく行っていることにあるわけです。

 

ふろは角質層の大敵です。

角質層は、皮膚の最も表面の層で、厚さが0・02ミリ程度しかありません。この薄い角質層が、外部から体内に異物が侵入するのを防いだり、体内の水分が蒸発するのを防いだり、いわばバリアの役目を果たしています。

角質層は、角質細胞がブロックのように積み重なり、その間を細胞間脂質がセメントのようにつないでいる構造をしています。角質細胞は、すでに死んでしまった細胞です。体の最前線で盾になっているわけですから、死んだ細胞のほうが都合がいいわけです。古くなった角質細胞は、アカとなって少しずつはがれ落ちていきます。

 

皮膚がお湯に濡れた状態になると、細胞間脂質が溶けてしまいます。熱いおふろに長時間つかっていると、細胞間脂質がどんどんお湯に流れ出し、角質細胞が取れやすくなります。

アトピー性皮膚炎や乾燥肌の場合、もともと角質層の構造がもろいので、皮膚が濡れると角質細胞がはがれてしまいます。

 

さらに、アトピー性皮膚炎や乾燥肌では、角質細胞が水分を維持できないので、皮膚が濡れると角質細胞がふやけ、皮膚が乾くと角質細胞内の水分もいっしょに急激に蒸発して、干からびてしまいます。ですから、角質細胞どうしの間に大きなすきまができ、異物が入りやすくなって、バリア機能が果たせないのです。

アトピー性皮膚炎や乾燥肌の人は、ふろ上がりに猛烈に体がかゆくなったり、洗顔後にピッと皮膚が突っ張ったりします。これは、角質層に細かいひび割れが入っているからです。


頻繁に保湿剤を塗っても
カサカサするならどうする?

かゆみや突っ張りを解消するのが、保湿剤です。保湿剤には、化粧水や乳液などの化粧品、ワセリン、保湿クリームなどがあります。

 

皮膚科では、アトピー性皮膚炎や乾燥肌の患者さんに、まず顔や体をよく洗い、すぐに保湿剤を塗って乾燥を防ぐように指導されてきました。しかし、従来のスキンケアで、アトピー性皮膚炎や乾燥肌がいっこうに改善しない例は数多くあります。

数年にわたって、まじめにスキンケアを続けても治らないといって、九州医療センターの皮膚科には、毎日数人の患者さんが訪れてくるそうです。従来のスキンケアで効果が出ない患者さんには、ふろも保湿剤もやめてもらおうと今山医師は考えました。

 

そもそも今山医師はふろがあまり好きではありませんでした。ですから、毎日ふろに入る習慣に、疑問を持っていました。

 

「日本人以外の民族は、軽くシャワーを使う程度で、毎日ふろに入る習慣はありません。ふろに入ることが、すなわち清潔という考え方は、世界の中ではごく少数なのです。全世界的な観点で言えば、ふろに入らなくても、まったく汚くありません。

日本の建物は、空調が整い、気密性も高くなっています。住宅や会社など建物の中で一日を大半を過ごす人が、アトピー性皮膚炎や乾燥肌になっている場合、ふろに入らない害よりもふろに入る害のほうがはるかに大きいのです」

 

バリア機能と水分保持能力を
皮膚に取り戻す

ふろに入らなければ、角質細胞が保たれて、バリア機能が回復します。

それに加え、保湿剤をやめることで、水分を維持する力が備わった角質細胞が作られます。

人間の体には、環境に適応する能力があります。長期にわたって、保湿剤を塗ると、外部から水分が与えられることに適した角質細胞に変化し、自ら潤いを保とうとしなくなります。保湿剤を断てば、その状態に適応して、自ら潤いを維持する角質細胞ができるのです。

 

今山医師はふろ断ち・保湿剤断ちを、アトピー性皮膚炎の乳児から乾燥肌の高齢の女性まで、幅広い年代の患者さんに指導しました。その結果、症状が改善し、ふろに入ってもかゆみや乾燥の起こらない皮膚に回復しています。

もっとも、ふろ断ちをした患者さんは、皮膚が回復した後もあまりふろに入らないようです。

 

重度のアトピー性皮膚炎の患者さんは、数週間入院して、ふろ断ち・保湿剤断ちを含めた治療を行っています。軽度のアトピー性皮膚炎や、乾燥肌の場合は、経過を見るために通院してふろ断ちしています。

 

軽度のアトピー性皮膚炎や、乾燥肌の人は、自宅でふろ断ち・保湿剤断ちは実行できます。ステロイドを長期にわたって使用している人は、必ず医師に相談してください。

 

ふろ断ちを始めると、1週間くらいは、かゆみや入浴しない違和感を覚えるようです。

重症のアトピー性皮膚炎の場合、「体からにおいがした」と話していました。これは、皮膚から出た汁が空気と反応して、においが発生するからです。1週間を過ぎると、ふろに入らなくても平気になります。そして、皮膚の表面が少しずつ硬く、厚くなっていき、ゴワゴワした感じがします。

 

この間、表皮の下部では細胞が作られ、押し上げられて角質細胞になり、角質層に達します。

アトピー性皮膚炎や乾燥肌では、細胞ができてから角質層に達するまでのサイクルが短く、そのため、水分を保持する能力の低い「粗悪品」の角質細胞ができてしまいます。 

ふろに入らなければ、角質細胞がアカになってはがれ落ちにくくなります。ですから、皮膚の表面にはアカがたまっていきます。ゴワゴワするのは、そのためです。

 

アカを汚らしいと思う人も多いようですが、皮膚を守ってくれる大事なものです。アカが残ると、その状態に適応して、角質細胞ができるサイクルが長くなります。こうして、水分をきちんと保持する角質細胞が作られるようになります。

 

ふろ断ちをして4週間ほどで、皮膚の表面が、徐々にウロコ状にはがれ落ちてきます。筋肉がよく動く場所、顔だと目や口の周りから、白く皮膚がめくれます。

こうして全身の皮膚の表面がはがれると、健康な角質層が現れてくるのです。

なお、ふろ断ち・保湿剤断ちの効果が現れるスピードは、個人差が大きいので、ここで述べたのはあくまで一例と考えてください。

 

一つの原因だけで

発症するわけではない

アトピー治療最前線』(NHK取材班 編、岩波書店)で紹介されていた、今山修平医師の「足して10で発病」の理論。アトピー性皮膚炎が発症するのは、皮膚のバリア機能の低下といった患者自身の異常、そしてダニや花粉などの外界からの関与が積み重なることだという考え方のようです。

 

■皮膚の機能異常(患者自身の異常)
皮膚のバリア機能低下
汗の中の免疫グロブリンの分泌低下
皮膚表面の細菌叢の異常
表皮内のマスト細胞
表皮内の神経の増加
そのほか

■アレルギー(外界からの関与)
環境抗原(ダニ、花粉など)
食物抗原(特に乳幼児で)
接触抗原(細菌、金属など)
そのほか

 

上記のような原因を足していって10になれば、アトピー性皮膚炎が起こるということです。例えば、皮膚のバリア機能低下3点+皮膚表面の細菌叢の異常3点+表皮内の神経の増加2点+環境抗原2点=10点→発症となります。

 

現在、今山医師は「足して10で発病」の理論でアトピー性皮膚炎を説明していないかもしれません。理論を練り直してどんどん新しくしていく人が多数いるからです。

 

とはいえ、インフルエンザなどの感染症生活習慣病などの慢性疾患、そして日々の不調も、「足して10で発病」の理論でとらえたほうがいいと私は思っています。


今、子どもたちが通う小学校でロタウイルスによる胃腸炎が流行しているそうです。

ロタウイルスの感染力は非常に強いのですが、胃腸炎を発症しない子どもがいます。その子どもは手洗いとうがいを励行していたかというと、子どもたちの様子を見たり、ママたちの話を聞いたりしているとそれだけではなさそうです。手洗いとうがいで「清潔」にしている子どもや、非常に注意している家庭でも、胃腸炎が発症しています。


ロタウイルスという外界からの関与には、一般論として手洗いとうがいで対抗できるのかもしれません。しかし、患者自身の異常というか、本人の健康状態、例えば過大なストレス、不規則な生活による免疫力の低下などのほうが、実は大きく関係している可能性もあるのです。

 

私たちは病気になると、つい原因を一点に絞りがちです。おそらく、一つに決めつけたほうが、いろいろと検討して頭を悩ませなくて済むので、楽なのだと思います。

ちなみに、手洗いとうがいで「清潔」と、わざわざかっこに入れているのも、アルコールやうがい薬を使って除菌をすることが健康を守ることにつながるのかという、私の皮肉なのですが(理由はhttp://chienoki.d.dooo.jp/shouchishuppan/huronihairanai.htmlに書いています)

 

世の中で当たり前とされている(あるいは広告で喧伝されている)前提を疑ってみること。一点集中で楽をしようとせずに、「足して10で発病」の理論で病気や不調をとらえること。

 

医療関連のキュレーションサイトで誤りのある情報が掲載され、インターネットの情報が信頼できないという意見があります。これは私個人の考えですが、インターネットだけでなく、医師や専門家の話も含めて複数の情報を集めて「足して10で発病」の理論で病気や不調を検討し、自分の体で試すことで最適な方法を見つかります。

こうした理由で、インターネットの情報は大いに利用することをお勧めします。

 

ただ、以下の情報は最初から検討する必要はありません。

●「これさえ行っていれば大丈夫」「どんな病気や症状にも効く」などと言われている

●実行するための費用が非常に高い

●まったく理屈がない(「ゴッドハンド」「奇跡の~」など)

 

情報を集めて確率や論理性を頭で考えることは必要ですが、考えているだけでは目の前の現実はなに一つ変わらないでしょう。結局、自分に効果があるかどうかは、実際に行動に移して試してみなければわかりません。

 

※以下は、私が製作した単行本の見開きです。医師は監修しておらず、「美肌とはなにか?」「清潔とはなにか?」をテーマに編集者として情報をまとめました。

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