下痢・便秘を繰り返す過敏性腸症候群は「心の病」ではない!? 発酵食品で悪化も

「発酵食品 イコール 腸にいい」という広告が多いので、作成した記事の元原稿です。

私自身、過敏性腸症候群に悩まされたことがあります。ちょうどストレスがたまっていた時期だったのですが、「心の病」にされてしまうとしんどいんですよね。

「あなたの性格のせいでストレスがたまっているんですよ」

「そんな性格だから病気になっているんですよ」

「心の病」という診断には、こんなメッセージが含まれていると感じるのです。

そんなことを言われるくらいなら、わざわざ病院に行きません。当時の私も、時間的な余裕がないこともあって受診しませんでした。

一昔前は「原因不明だから気のせい」「心の病」とされていた症状が、メタゲノム解析など技術の発展で、原因が突き止められることも少なくありません。

そうした可能性もあるのですから、「『心の病』だから私が悪い」「『心の病』だから仕方がない」と自分を責めたり、あきらめたりする必要がないことをお伝えしたいと思います。

「発酵食品を食べるから過敏性腸症候群になる」ではなく「過敏性腸症候群の場合、発酵食品で症状が悪化することがある」とお伝えします。

ストレス→腸内細菌叢の変化→高FODMAP食(以下の原稿で解説)の摂取→過敏性腸症候群という構図です。

 

過敏性腸症候群のときは発酵食品に要注意!

 

下痢・便秘を繰り返す過敏性腸症候群は「心の病」ではない!? 発酵食品で悪化も

発酵食品で腸の病気が悪化!?

下腹をいきなりギュギューと締め上げられるような激しい痛み。猛烈な便意。寒気。脂汗。

 トイレに駆け込み、一息ついて、トイレから出ようとすると、激痛の再発。トイレの出入りを繰り返した後、ようやく痛みが出なくなったら、数日にわたる便秘。ガスがたまっておなかが張り、息苦しい…… 

 こうした腹痛と下痢、便秘に、私は悩まされていた。典型的な「過敏性腸症候群」の症状である。 

 あるデータによれば、日本人の10人に1人が過敏性腸症候群である。これは氷山の一角と私はにらんでいる。時間的な制約や「どうせ『心の病』と診断されるだけだろう」といった推測などで、受診しないで我慢している人が多数いるはずだ。以前の私がそうだった。

 過敏性腸症候群の症状に悩まされながら、受診をせず、一般に「腸にいい」とされている発酵食品を摂取して自己流で治そうとしている人に、ぜひ伝えたいことがある。それは、発酵食品などが過敏性腸症候群の引き金になっているという可能性だ。 

 つまり、過敏性腸症候群は「心の病」では片づけられないのである。

「気の持ちよう」にされて
追い詰められている患者も

 胸やけ・もたれ・胸痛・腹痛・下痢・便秘などが繰り返し起こるが、内視鏡検査などで胃や腸には明らかな異常が認められないものを「機能性消化管疾患」と呼ぶ。過敏性腸症候群は機能性消化管疾患の1つだ。

 過敏性腸症候群だと検査で異常が見つけられないために、患者の心に原因があるとして心療内科や精神科を紹介されるケースも多い。

 確かに、腸はストレスの影響を大きく受ける。意志とは無関係に臓器の働きや血流などをコントロールしている「自律神経」は、ストレスでバランスが崩れやすい。そのため、ストレスで自律神経が失調し、過敏性腸症候群が引き起こされるのだ。

 このように「脳腸相関」といって、脳と腸は密接に影響を及ぼし合うこともわかっている。

 そのため、過敏性腸症候群は、緊張や不安の強い人、神経質、がんばり屋などに多いと言われてきた。「だから気の持ちようで症状は改善する」というわけだが、実生活では仕事があり、テストがあり、子育てがあり、人間関係がある。どんなに腹痛で苦しかろうと、放棄できないことを抱えながら私たちは暮らしているのだ。過敏性腸症候群を「心の病」にされてしまって、逆に追い詰められた患者もいるのではないだろうか。

低FODMAP食で
過敏性腸症候群が改善している

 過敏性腸症候群は欧米やオセアニアでも患者が多く、研究が進められている。

 最近話題になったのが、オーストラリアのモナッシュ大学の研究チームが発表した「低FODMAP(フォドマップ)食」。FODMAPとは、fermentable oligosaccharides, disaccharides, monosaccharides and polyols(発酵性のオリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオール)の略語である。低FODMAP食によって過敏性腸症候群を改善することが科学的に証明されているのだ。

□高FODMAP食の例

リンゴ、スイカ、ドライフルーツ、タマネギ、アスパラガス、ブロッコリー、マッシュルーム、小麦、アイスクリーム、ヨーグルト、ハチミツ、大豆など

□低FODMAP食の例

バナナ、ブルーベリー、レモン、グレープフルーツ、ニンジン、セロリ、ジャガイモ、カボチャ、米、豆腐、砂糖など 

 糖類の多くは消化酵素で分解され、小腸で吸収される。しかし、FODMAPは小腸で吸収されにくいので、そのまま大腸に達する。FODMAPによって大腸内での発酵が進み、過剰なガスが発生。さらに腸の中に水分を引き寄せて、症状を悪化させると考えられている。

 そしてソルビトールという糖類が含まれている市販の漬け物やみそは、FODMAPを多く含む食品に分類される。

 以上のことから、過敏性腸症候群に悩んでいる人が、ヨーグルトや漬け物などを食べると、症状が悪化する可能性が高い。

 過敏性腸症候群の人が低FODMAP食を3週間続けると、約70%に症状の改善が見られたという発表がある。過敏性腸症候群と診断を受けた人は、「『心の病』だから仕方がない」とあきらめずに、食事療法に取り組んでみてはどうだろうか。

(記事はヘルスプレスに掲載)