姿勢をよくしただけで脳の血流量が1.22倍増えた

脳神経外科医を取材したときに、神経について勉強し直しました。

それ以前の取材では、セロトニンドーパミンといった神経伝達物質、自律神経など、神経に関係する一部だけを大きく取り上げることがほとんどでした。改めて「神経とは?」と自分に問い直すと、ニューロン神経細胞)の長さなどわからないことのほうが多いと気づきました。

脳についてはニューロンは1割程度で、9割はグリア細胞なのだそうです。
脳神経外科医の取材で鍵になったのは、グリア細胞のオリゴデンドロサイトとシュワン細胞です。

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まずは神経の基礎知識をおさらいします。

神経系は、中枢神経系と末梢神経系に分けられます。
●中枢神経系 脳(大脳、間脳、脳幹、小脳)と脊髄→情報分析をする、指令を与える
末梢神経系 脳神経、脊髄神経→皮膚や内臓、目などでキャッチした情報を中枢神経系に送る、指令を全身に送る

脳神経とは、脳を出入りする、12対の末梢神経です。
○嗅神経 特殊感覚神経 大脳辺縁系の嗅脳に出入り
○視神経 特殊感覚神経 間脳に出入り
動眼神経 体制運動神経 脳幹に出入り
○滑車神経 体制運動神経 脳幹に出入り
○三叉神経 鰓弓神経 脳幹に出入り
○外転神経 体制運動神経 脳幹に出入り
○顔面神経 鰓弓神経 脳幹に出入り
○内耳神経 特殊感覚神経 脳幹に出入り
○舌咽神経 鰓弓神経 脳幹に出入り
○迷走神経 鰓弓神経 脳幹に出入り
○副神経 鰓弓神経 脳幹に出入り
○舌下神経 体制運動神経 脳幹に出入り

脊髄神経とは、脊髄を出入りする、31対の末梢神経です。
○頸神経 8対
○胸神経 12対
○腰神経 5対
仙骨神経 5対
○尾骨神経 1対

脊髄神経を機能的に分類すると、次の3つになります。
○感覚神経 求心性線維 皮膚などの感覚を伝達する
○体制運動神経 遠心性線維 運動の指令を筋肉に伝達する
○自律神経 遠心性線維 内臓機能を調節する

神経系を構成するのが、ニューロン
ニューロンは、他の細胞から情報を受け取る樹状突起と、他の細胞に情報を出力する軸索、神経伝達物質が分泌される神経終末で構成されています。
電気信号は、樹状突起→軸索→神経終末の順に伝えります。神経終末と別のニューロン樹状突起が連結しているところがシナプスで、シナプスのすき間で神経伝達物質を受け渡しして電気信号を伝えています。

中枢神経から皮膚や内臓、目などまで、1個のニューロンで構成されるのだそうです。
私は何個かのニューロンが中継していると勘違いしていました。
いちばんニューロンが長いのは坐骨神経で、1mほどの長さとのこと。
ニューロンが長いというのは、すなわち軸索が長いということです。

多くのニューロンの軸索には、ミエリン(髄鞘)という膜がバウムクーヘンのようにぐるぐると巻きついています。
ミエリンが軸索全体を巻きついているわけではなく、ところどころにすき間があります。
このすき間をランヴィエ絞輪と言います。
軸索を伝わる電気信号が、ランヴィエ絞輪をポンポンと跳ぶこと(跳躍伝導)で、伝わる速度が100倍ぐらい加速されるのだそうです。

言い換えると、ミエリンが電気を通さない絶縁体として存在することで、電気信号が速く伝達されているというわけです。
ミエリンをつくるのが、グリア細胞のオリゴデンドロサイトとシュワン細胞。
中枢神経系でミエリンを作る細胞はオリゴデンドロサイト、末梢神経系でミエリンを作る細胞はシュワン細胞と呼ばれています。

ミエリンが軸索からはがれる(脱髄)と、神経細胞を電気信号が伝わっていく速度が遅くなるだけでなく、神経細胞が死んでしまうのだそうです。
手足のまひや失明などが起こる「多発性硬化症」は、ミエリンがはがれ落ちたことが原因だとされています。

ミエリンの修復については、通常は自然に起こっているとのこと。
しかし、ミエリンを作るオリゴデンドロサイトとシュワン細胞に血液が行き渡らないなどの原因で、ミエリンは修復されないようです。
血流をよくするには、体を温めて血を増やす食品を摂取しすることが大切です。

そしてやっぱりウォーキング。
家の外を歩き回って、皮膚で風を受け、小鳥のさえずりなどを聞き、空気をかぐのは五感を刺激して脳の血流を増やすことにつながります。
同時に、ウォーキングという全身運動で、体も脳も血流が活発になるのです。

取材した脳神経外科医によると、猫背などの悪い姿勢は神経を圧迫させるのだそうです。
この医師が光トポグラフィで測定したところ、姿勢をよくしただけで脳の血流量が1.22倍増えたとのこと。

脳トレと称したゲームを背中を丸めて座って行うよりも、ウォーキングのほうは脳のためにはよいと私は思っています。骨盤ぐるぐるなどで姿勢をよくしてからウォーキングを行うと、脳の血流をアップする効果が高まると期待できます。

話を神経に戻すと、昔は脳や神経の研究はニューロンのことばかりで、グリア細胞はわき役、あるいは悪役にされてきたようです。
それが1980年代頃に細胞内カルシウム濃度研究法や二光子レーザー顕微鏡などの技術によって、グリア細胞の機能が発見されて研究の主役になってきたとのこと。
私の学生時代と今とでは、生物の教科書の内容もずいぶん変わっているのだろうなと思った次第です。