「内臓が破裂する可能性があっても心臓マッサージを受けますか」  終末期に考えたい医療のあり方

あなたが末期がんだったら、人工呼吸器の装着や心肺蘇生(CPR)を希望しますか。

こうした質問に対し、一般の人の約10~15%が「希望する」と回答しました(厚生労働省が2013年に行った「人生の最終段階における医療に関する意識調査」)。

 

また、末期がんの患者の症状が急激に悪化して痛みに苦しみだしたときに、家族が心肺蘇生を強く希望するケースもあります。

 

末期がんの場合、口から管を入れて人工呼吸器につないだり、心臓マッサージを行ったりしても、大幅に寿命が延びるわけではありません。むしろ、こうした処置で苦しい思いをするでしょう。

心臓マッサージでは肋骨などが折れたり肝臓などが破裂したして、その結果、患者自身は元の生活に戻れなく可能性もあるのです。

 

心肺蘇生にはリスクが伴うことが、医療関係者以外にあまり知られていないようです。

 

まずは、リスクについての情報を得ること。

そして、心肺蘇生を希望するかどうかの判断をすること。

それから、心肺蘇生を希望しない場合には、家族やかかりつけ医にその旨を伝えておくなど、意思を明確にします。近所の人には「私が倒れても119番通報はせずにかかりつけ医に連絡してほしい」と話しておくといいでしょう。

 

「Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示」とは、患者が尊厳を保ちながら死にゆく権利を守るため、「心停止時に心肺蘇生を行わない」とする事前指示です。

心肺蘇生とは、心臓や肺を動かすための対症療法と言えます。がんなどの病気から回復するわけではないし、対症療法によって患者の体にメスを入れたり管を挿入したりして、ある意味、傷をつけることにもつながります。心肺蘇生で命を取り留めたとしても、寝たきりや植物状態脳死に至ったり、全身浮腫や大出血などの合併症が出たりすることがあります。

さらに、終末期の患者の場合、対症療法を行ってもまたすぐに同じ症状を再発する可能性が高いのです。

 

末期がんなど終末期の患者がいる家庭では、DNAR指示について検討しておくといいでしょう。

 

加えて、DNAR指示は心停止時に限ります。言い換えると、心臓が停止しない限りは、心肺蘇生は行われるということ。

例えば心臓が弱く動きながら呼吸困難に陥った際に人工呼吸器につなぐか、積極的な生命維持は行わず鎮痛・鎮静薬といった痛みなどの自覚症状の軽減に絞るのか、終末期医療の方針についての検討も必要です。

 

私自身は、DNAR指示の書類は作成したいし、生命維持のための処置は受けずに自覚症状の軽減を重視したいと考えています。

それは私が長年にわたってさまざまな医師を取材したり、終末期医療について調べたりした経験から生まれた考え。

 

医療の現場では、医師などの医療関係者が患者やその家族に対し、DNAR指示の書類の作成を提案するケースがあります。その中で、患者側が「DNAR指示=治療放棄」と受け取ってしまいかねないような、誤解を生む医師の態度が見られるようです。

結果として、患者やその家族が「DNAR指示の書類を作れということは、医者に見放されたのだ」と絶望を味わっているケースがあります。

 

大切なのは、納得感。

患者だけでなく、家族も、そして医師・看護師といった医療関係者も、DNAR指示と終末期医療について考える時間が必要なのかもしれません。

 

 

これまでの日本では、誰かが倒れていれば119番通報をして救急車を呼ぶのが当たり前。

どんな患者でも、命を長らえさせるためにできる医療を全部やる、あるいは当然やってもらう。

目の前の心肺蘇生を最大限に行って、その先の寝たきり状態になるリスクは考えない。

長く生きることが「勝ち」、死は「敗北」。

 

こうした固定観念を壊して自分なりに納得する答えを作ることが、私たちが自分らしい生を全うすることにつながるのではないでしょうか。